冬らしくキリッと冷たい晴れの日。
久しぶりに建築探報に行ってきました。
関西屈指の豪邸がある芦屋、そこにあるヨドコウ迎賓館を訪ねました。
この建物は、日本に残る数少ないフランク・ロイド・ライトの作品で、国の重要文化財にも指定されています。ライトの建築美を堪能できる貴重な場所なのです。豪華な作りを一度見てみたかったのです!
急坂(ライト坂と名前がついていました)を登った先に立つこの建物は斜面を利用した作りになっていて、上がるごとに小部屋があったり、バルコニーが突き出したようになっていたり広さもよくわからない作りです。木々に囲まれて全貌は見えないし、4階建の横長な構造になっているとは思いもしませんでした。
ヨドコウ迎賓館は1924年、山邑太左衛門(やまむらたざえもん)という灘の造り酒屋の8代目の別邸として建てられました。当時は「山邑家住宅」と呼ばれていましたが、後に「淀川製鋼所(ヨドコウ)」が所有し、社宅などを経て迎賓館として使われるようになり、現在では重要文化財として一般公開されています。
少し暗く見える入り口から最初に入るのは圧巻の応接室、たくさんのお客様を迎えたであろうそのお部屋は豪華な作りと共に、おしゃれな六角形のテーブルが置かれています。こちらのテーブルと椅子は、当時のものではなくこの建物の公開に合わせてデザインされたものなのだそうです。入り口横には素敵な薪ストーブが置かれていますが、マントルピースなどはなく割とシンプルな作りのようです。
窓からの景色はすぐ裏の六甲山系の山を映し出し、絵画のような素敵な空間。窓際に広く置かれている作り付けのソファが、空間を楽しむように作られています。
高い天井には小さな小窓がたくさん並んでいてあかりを取り入れることを楽しむかのようです。
これは掃除が大変だな!と思ったのですが、合理的ばかりがデザインではない、というライトの考えも納得のおしゃれ感です。
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次の部屋へと移動すると、今度は飾り窓の並ぶ廊下があります。木漏れ日を表現したこの窓は光が揺れたりして、またまたため息が出てしまいます。まさに洋風と和風の融合、一段上がった畳部屋のすぐ下には主寝室だったと言われる空間があったりと、現代でも取り入れたくなるような素敵なデザインがそこにはありました。
有名建築物とあって、本格的なカメラを構えた見学の方が多く、スマホで撮っていたのが申し訳ないくらいでした。
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フランク・ロイド・ライトはアメリカの建築家で、近代建築の巨匠とされています。彼は「有機的建築(オーガニック・アーキテクチャー)」という哲学を提唱し、建物を周囲の環境や自然と調和させることを重視しました。ヨドコウ迎賓館もその例外ではなく、地形を活かした設計が特徴です。館内にある、幾何学模様のステンドグラスや木材と石材をふんだんに使った装飾が目を引きます。これはライトが得意としたデザインの一つで、日本の伝統的な建築美を尊重しながらも、モダンで個性的な空間を作り出しています。
〜館内の説明より抜粋〜
立派な迎賓館は、桁違いに大きなお家でした。私が住むようになることはないと思う反面、なんだかとても人の息遣いというか生活がされていたという気配を感じることができました。畳があったからかな?同時に、この規模のお家の維持は相当に大変だろうと、思いました。
掃除も一人では追いつかないでしょうから、お手伝いさんは何人いらっしゃったでしょうね。実際、電気代は月に8万円ほどもしたそうです。
当時は電気の普及もまだまだの時代だったので、相当に桁違いだったのでしょうね〜。
山歩きをしていると、細い木々の間の道を抜けてふわっとひらけた空間が訪れて景色が広がることがあります。
こちらの旧山邑邸にある狭い入り口を抜けて広がる広い空間や、窓から見えるひらけた芦屋の街並み、バルコニーの奥に狭い階段を下ると見えてくる景色、この体験はとても山歩きをした時の感覚に似ているなと思いました。
これがライトの哲学、自然との調和だったのでしょうか。
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芦屋の街並みを眺める景色を思い出しながら帰り道の坂を下りました。
坂の上って大変そうだと思ってたけど、案外いいこともあるかもですね。
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